人が亡くなった現場などを清掃する仕事として「特殊清掃」があります。日常で関わりのない仕事である分、目指し方や資格についてよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、特殊清掃の仕事に興味がある方に向けて以下の情報を紹介します。
・必要な資格
・仕事内容
・用意するべき機材
資格の取り方や費用などについても詳しく紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
特殊清掃とは?
特殊清掃とは、以下をはじめとする事態に陥った部屋の清掃・現状復帰を行う仕事です。
・孤独死
・事件、事故
・ゴミ屋敷
特殊清掃業者は、屋内で人が亡くなった際の汚れや匂いを取り除き、部屋をできるだけ元通りにします。孤独死して発見が遅れ、汚染が激しいケースなどに関しても、部屋の状況にあわせた対応が必要です。
ゴミ屋敷の清掃を行う業者も存在します。長年ゴミを溜め込んだ高齢者の部屋など「部屋に入ることすら難しい」といったケースにも対応します。
また、特殊清掃を行う中で、壁や床のリフォームや害虫の駆除など新たに必要な対応が出てくることもあります。その場合は、専門業者と連携を取ることで業務を進めていきます。
高齢化や核家族化が進行する中で、特殊清掃は今後も社会から大いに求められると考えられる仕事の1つです。
特殊清掃の仕事内容
特殊清掃は基本的に現場の汚染が激しいため、 安全を確保しながらの作業が必要です。
部屋に入る際には、薬剤の噴霧により除菌・消臭を行い、長時間の作業が行える状態にします。遺体の体液に触れて感染症にかかったり、匂いを嗅いでショックを受けたりするリスクもあるため、あらかじめ身につけた知識で自らの身を守りながらの作業となるでしょう。
除菌・消臭後は、実際の清掃に入ります。体液や汚物などで床が汚れていることがあるため、現場の状況に応じた方法で清掃を行うことが求められます。汚れや臭いの取れない家具などは、処分・解体の対応を行います。
最後にもう一度、除菌・消臭効果のある特殊な薬剤を噴霧して作業終了です。
現場となる部屋を出た後は、自らの除菌・消臭も行います。付着物が自分や周囲に危害を及ぼすことを防ぐため、作業服の廃棄や身体の除菌などを徹底的に行う必要があります。
特殊清掃で望ましい資格や免許4個
特殊清掃を行うにあたって、必ずしも資格がいるというわけではありません。しかし、安全性や利便性、顧客からの信頼性といった観点から考えれば、いくつかの資格を取得しておくと安心です。
本項では、特殊清掃を行う際に取得しておきたい資格を4つ紹介します。
■1.事件現場特殊清掃士
事件現場特殊清掃士とは、一般社団法人である「事件現場特殊清掃センター」が提供する資格です。
事件現場特殊清掃士を取得するための勉強を通じて、以下をはじめとするテーマを学ぶことができます。
・特殊清掃とは
・業務を行う上で必要なこと
・特殊清掃を取り巻く社会問題
・事例研究
なお、自宅に届く教材をもとに学習するため、研修や実地訓練はありません。実務面の対応方法などについては、経験者に指導を仰いで学ぶ必要があります。
事件現場特殊清掃士については、本記事の後半でも詳しく解説します。
■2.遺品整理士
遺品整理士は、一般社団法人の「遺品整理士認定協会」が提供する資格です。
遺品の整理にあたって、遺族は「誰に相談すればいいかわからない」「時間的・精神的に整理を行う余裕がない」といったニーズを抱えがちです。
そこで、安心して遺品の整理を任せられる専門家として遺品整理士の資格が生まれました。遺品整理士の資格取得にあたって学ぶ内容は、下記の通りです。
・遺品整理の業務
・法的知識
・遺品整理を取り巻く社会問題
特殊清掃業者の中には、部屋に残った遺品を整理する業務をあわせて請け負う業者も存在します。 そのような業務にも取り組みたいという方は、取得を検討してもいいでしょう。
■3.普通免許
自動車を運転するための普通免許も、取得しておきたいものの1つです。
特殊清掃の現場には、特殊な機材を積み込むためのトラックで向かうことが一般的です。また、作業終了後に匂いがついたまま電車などの公共交通機関で帰ることも難しいでしょう。
普通免許で運転できるトラックには、車両総重量や最大積載量などに規定があります。 免許を取得したタイミングによってもこれらの基準が異なるため、自分が運転できるトラックの種類を確認することが大切です。
必要な機材の量などによっては、より大きなトラックを運転するための免許を取得する場合もあります。普通免許で運転できる小型のトラックでは不便な場合には、検討してもいいでしょう。
■4.古物商許可
古物商許可とは、事業を通じて古物を売買する際に必要となる許可です。 特殊清掃の部屋から出てきた遺品を買い取って販売する場合は、この古物商許可を取得しましょう。
古物商許可は、営業する地域の管轄の警察署に申請することで取得できます。
取得にあたっては学習や試験などは不要で、身分証明書や住民票の写しなど、必要な書類を提出することで申請可能です。
申請後は審査が行われ、40日程度の期間がかかることが一般的です。また、手数料に2万円程度の費用が必要になることを覚えておきましょう。
事件現場特殊清掃士の資格取得方法と申し込みの流れ
事件現場特殊清掃士は、前述した事件現場特殊清掃センターの開催する養成講座を受講することで取得できます。
養成講座を受講して資格を取得するまでの流れは、下記の通りです。
1.Web上などから申し込みを行う
2.自宅に届いた教材で学習する
3.学習後、レポート(問題集)を提出する
4.合格通知が届く
5.認定証書が発行される
自宅での学習となるため、自分のペースに合わせて学習することが可能です。養成講座の学習期間は2ヶ月間が目安ですが、過ぎてしまいそうな時でも、センターに連絡することで延長してもらうことができます。
提出したレポートの内容がセンターの定める基準に達していれば、晴れて合格となります。教材に記載された内容をしっかりと学習していれば、特に問題なく合格できるでしょう。
養成講座の申込には、25,000円が必要です。また、合格した場合には会費及び手続き代として5,000円支払うことになります。会費は更新制のため、2年間を経過する際に5,000円を再度支払う必要があります。
合格後には、事件現場特殊清掃士を取得した人を対象にした独立開業支援を受けることもできます。知識を深めることを目的としたセミナーなども適宜開催しているため、特殊清掃を通じた開業に興味がある人は、取得・入会を検討してみてはいかがでしょうか。
特殊清掃に必要な機材
特殊清掃には、汚れや臭いを取り除くための特殊な機材を使うことが一般的です。
・オゾン脱臭機
・噴霧器
・匂い測定器
オゾン脱臭機とは、オゾンと呼ばれる物質の力で腐敗臭などの強い臭いも取り除く機材です。 特殊清掃では、病院や介護施設などでも使われている業務用の強力なオゾン脱臭機を使います。
また、高性能の噴霧器で部屋に薬剤を行き渡らせ、確実に消臭・除菌を行うことが大切です。
機材に加えて、以下をはじめとする消耗品もあわせて用意することが求められます。
・ゴム手袋
・防護マスク
・防護服
・長靴
・養生テープ、ビニール袋、ヘラなど
まとめ
特殊清掃は人が亡くなった現場を清掃する特殊な仕事ではありますが、必ず誰かがやらなくてはならない仕事です。高齢化や核家族化、家族関係の希薄化などによって、今後も需要が高まると考えられています。
特殊清掃を行うために必ずしも資格が必要というわけではありませんが、資格を取得することで知識が深まり、顧客を獲得するアピールポイントとなるでしょう。
特殊清掃の仕事に興味があるという方は、今回の記事を参考に資格を取得してみてはいかがでしょうか。